ボスニア・ヘルツェゴビナ。この国の名を聞いただけで心が疼きます。ですから旅の行程を見てここに行くことを知ったとき、内戦はとっくに終わっているのに行きたくないと思ったのです。 旧ユーゴスラビアの対立で起きた、ボスニア内戦では被害を最も激しく受けた国だからです。この国にはモスタルという町があります。名はモスト（橋）からきているといわれています。その橋はオスマントルコ時代の１５６６年につり橋から美しいアーチを描く石橋に造り替えられました。町民からはスタリ・モスト（古い橋）と呼ばれ親しまれてきました。その橋が１９９３年ボスニア内戦でクロアチア軍に破壊されたのでした。 橋が破壊されたばかりでなく、町民達は両岸に分かれて戦わなければならなくなりました。苦しい年月でした。１９９５年ＮＡＴＯ（北太平洋条約機構）の介入で内戦は終結しました。そして１９９９年橋の修復が始まり、５年の歳月をかけて２００４年元のままに復元されました。橋のたもとには「９３年を忘れるな」と刻まれた石碑が置かれています。２００５年世界遺産に登録されました。 バスから降りて少し歩くとまず破壊された家屋が目に飛び込んできました。外壁だけの家、又一面に弾丸の跡が残っている壁、一瞬、身が縮みます。終戦後１０年以上たちますから保存してあるのでしょうか。破壊された家を目の前にして、人間がここまでしてしまう事に恐ろしくなります。

旧市街へと歩いている途中に教会がありました。ちょっと入って見ましょうと中に入ります。祭壇に大きな十字架があるだけのガランとした聖堂でした。カトリックのフランシスコ修道会の聖ペテロ教会だそうです。内戦後に再建されましたが、資金が集まり次第内装を造っていくそうです。教会が建って良かったですね。

橋がありました。３年前に再建されたばかりで石は白く新品の橋です。町の人々にとって新しい希望の橋です。 橋の上に大勢の人が集まっていました。海水パンツをはいた何人かの男性が橋の手すりの外側にいて川を見下ろしています。どうも観光客に川へのジャンプを見せるようです。川に飛び込むのは伝統になっているそうです。しかしかなり危険なことで訓練を積んだ人達だけが出来るといいます。 見学代は一人１ユーロということで添乗員さんが２０ユーロを払っていました。 連写で撮ったら写っていました。飛び降り方も格好いい。それにしても随分高い橋から飛び降りるのですから川は深いのでしょうね？

奥に行くとトルコ風の土産物屋さんがずらりと並んでいます。エキゾチックな感じ。ヨーロッパでトルコ？モスクから流れるコーランを聞いてからずっと不思議に思ってました。ガイドブックがないから分からないのです。 バルカン半島は１５世紀頃からオスマン帝国の支配下に入り、１６〜１７世紀にかけモスタルは典型的なオスマン帝国の町になっていたそうです。２４のモスクと２２のマハラがあったといいます。１９世紀になるとオスマンの支配力が衰えキリスト教が入ってきました。 モスタルは４世紀もの間オスマントルコに支配されていたということですね・・・イスラムの町だったのです。

ボスニア・ヘルツゴビナは内陸の国と思われますが、アドリア海にわずかに面しているところがあります。まるでクロアチアを分断するようにわずか９ｋｍの海岸線が クロアチアの領地に割り込んでいるのです。 モスタル観光後、再びクロアチアに入国してドブロヴニクへ行きます。国境では運転手さんがジャパンと言うだけでいとも簡単に通過出来ました。

ドブロヴニクの手前にフィヨルドのような深い入り江があります。２００２年にトゥジマン橋が開通するまではその入り江をぐるりと遠回りしてドブロヴニクに行ったそうです。現在は橋を渡ってすぐに町に入れるようになりました。 展望台から見た景色が素晴らしい！・・・・真っ青な海と空、白い橋、緑の中の赤い屋根・・・・。 北のイストラ半島からアドリア海の沿岸を走ってきましたが、何処までも素晴らしい光景が続いています。あまりの美しさにタダタダ心が高揚しっぱなしです。もうすぐクロアチアの圧巻ドブロヴニクに到着します。