今日はアドリア海に突き出したイストラ半島の街々を訪ねました。イストラ半島はヴェネティアの東に位置しますので、１７９７年にヴェネティア共和国が崩壊するまでベネチアの領土となっていました。その為、街並みや文化などはヴェネティアの影響を大きく受けています。 イストラ半島の南先端にあるプーラは３０００年の歴史があり、ローマ時代には上下水道が整い、寺院　劇場　大理石装飾を施した邸宅が立ち並ぶ街でした。現在も様々な遺跡が残っています。

アリーナ

バスを下車してしばらく行くと大きな円形競技場が見えてきました。大きい！観客を２万３千人収容できるクロアチアで一番大きなローマ遺跡だそうです。ヴェローナやアルルの円形競技場よりも外壁が高く迫力があるとか。世界で６番目の規模といいます。当時の競技場の外観は彫像などで飾られて華やかだったようです。しかし中世になって他の建築に遺跡の石を使用したため、外壁には石を持ち去った跡の穴があいて淋しい姿になってしまいました。 円形劇場をアリーナといいますが、中央の床の事で、ラテン語の『ハリーナ』からきて『砂』という意味だそうです。

西ローマ帝国の崩壊後、市と地域は東ゴート族に破壊されました。東ゴート王国による支配は６０年後に終わりを迎え、プーラは東ローマ帝国勢力下のラヴェンナ総督府の支配を受けました(540年-751年)。この時代にプーラは繁栄し、東ローマ艦隊の主要港となったといいます。プーラ大聖堂と聖マリア・フォルモサ教会は、ラヴェンナ総督府時代からの建物です。

円形劇場を後にして旧市街を歩きます。プーラの旧市街はアドリア海に半円が出ています。円の中心にあるローマ劇場の回りをメイン道路がぐるりと一周しています。 駐車場を建設する為に掘ったら出て来たというローマ公衆浴場跡、プーラ大聖堂等を見ながら歩きます。大聖堂もローマ神殿の跡地に建設された４世紀の教会が元です。その後17世紀まで何回か修復されましたが、その時も円形劇場の石が使われたそうです。

ローマ時代の公共広場フォーラムには市庁舎の隣りに「アウグストゥス神殿」が建っています。神殿だけを見ているとローマ時代にタイムスリップしたようです。ＢＣ２年からＡＤ１４年にかけて初代ローマ皇帝アウグストゥスの時代に建てられた「アウグストゥス神殿」の隣には「月の女神のダイアナ神殿」が建てられていました。現在はありませんが、中世の時代まで広場に面して建っていたそうです。 ダイアナ神殿の跡地にロッジアが建てられ、現在は市庁舎になっています。その後ろの壁にダイアナ神殿と思われる円柱が残っているのです。驚きましたね。１２９６年に市庁舎を建設した当時は遺跡の保存などの考えはなく、手短にある遺跡を取り崩して建材として使っていましたから。神殿を全部壊さず外壁をそのまま市庁舎の壁に使ったのも、たまたまそこに円柱があったからでしょう。 そのおかげでダイアナ神殿の柱が現在まで保存されているのです。使うことが良いのかいけないのか難しい判断ですね。

城壁にあった１２の門のうちこの通りに現存す門は３つあります。１，２世紀に建設された２つのアーチがある双子門、セルギウスの凱旋門、紀元前1世紀のヘラクレス門が現代の街中にありました。でも少しも違和感はありません。遺跡は街の中に溶け込んでいます。

セルギウスの凱旋門は　紀元前２７年にローマ帝国に功績があったセルギウス家の未亡人が夫に捧げた門といいます。 凱旋門は当時の城門前に建てられ、両方の門をくぐると当時のメインストリートに続いていたそうです。城壁は後に取り壊され現在は繁華街の真ん中に２０００年以上前の凱旋門が建っていました。 勝利の女神ヴィクトリアやぶどうのレリーフで飾られているとの説明ですが黒く摩滅して見えません。